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オークニス 早く済ませるつもりだった。 見上げる空が赤くなってからは、あまり悠長に旅をすることはできない。そもそも時間が割けないから、エイトとゼシカだけで此処オークニスへ再びやって来たのであった。 オークニスでは、ヌーク草を手に入れたかった。以前、薬師のグラッドから譲り受けたヌーク草は錬金釜で非常に役立った。貴重なものなのか、その後手にいれる機会はなく、こうして再び彼を訪ねることにしたのである。 「グラッドさん、いないね」 ゼシカは酒場の暖炉で身を暖めながら呟いた。甘いアルコール酒を片手に、今はほろ酔いを楽しんでいる。 「すぐにルーラで皆と合流するつもりだったのに」 トロデ王は、極寒のオークニスへ行くのは嫌だと言った。また、サザンビークの大臣が行方不明になった件について気になっていたこともあり、今回は一行を二分したのである。エイトはヤンガスを誘うつもりだったが、ククールに「戦力のバランスを考えろ」と言われ、ゼシカと来ることになった。サザンビークの件は、ひとまずククール達に任せた。 「あっちの件が片付いていたら、悔しいわね」 小さな事でも負けず嫌いのゼシカは、想像だけで頬を膨らませる。エイトが笑いながら相槌した。ゼシカがグラスを傾けながら言葉を続ける。氷がカランと鳴った。 「もう一日、待ってみる?」 「うーん、そうしようか」 身が一回りも小さくなる程に凍えるオークニス。この寒さをしのぐには、確かにアルコールは最適だった。エイトも主人に薦められるままにカクテルを飲み、身体は仄かに温かくなっている。 「じゃあ、もう一杯だけ頼んだら、宿に戻ろ」 「ゼシカ、まだ飲むの?」 自分の倍以上の杯を傾けて、なお酔わないゼシカに驚きながら、エイトは困った顔をしつつ微笑んだ。 もう一杯、と言ったゼシカはその後も何杯か飲んで、エイトもそれに付き合わされた。最後の方は、あきれたエイトがほぼ強制的にゼシカを宿に運んでいた。風呂に入り、ベッドに潜った時は、お互いに瞳をトロンとさせていた。 「エイト、お風呂に入ったら酔いが冷めちゃったね」 隣のベッドから、ゼシカの声が聞こえる。疲れたようにエイトが返事した。 「まだゼシカは酔ってるよ」 やれやれ、という声だった。自分が宿まで連れてこなければ、ゼシカはあのまま酔いつぶれて凍死するところだったのに、とエイトは思った。 「本当、もう酔っていないわ。寒いもの」 寒いと聞いて、エイトは気になる。彼女への恨みは一気に収束してしまう。 「大丈夫?暖炉の火をもう少し…」 エイトが二人のベッドの間にある暖炉を覗こうとしたとき、彼の布団にゼシカがスルリと入ってきた。 「ううん、エイトの布団で寝るから平気」 「え…えっと、ちょっと…」 しどろもどろになったエイトをよそに、ゼシカは涼しい顔で身体を丸めた。 「ゼシカ、やっぱり酔って…」 「酔ってないったら、本当」 起き上がろうとするエイトの服を掴んで、上目に見つめるその瞳は、確かに酔っていない。その視線はどこか真剣で、かつ有無を言わせぬ気迫があるような。 (…僕だって、男だよ?) ククールと一緒の、と言いたかった。しかしエイトはそう思いながらも、ゼシカに合わせることにする。そのまま彼女を受け入れて、複雑な気持ちで布団に納まった。 「ほら、やっぱり二人の方が温かい」 暫くしてゼシカが言った。 「…うん」 確かに一人で眠る時は、布団が自分の体温で温められるのに時間がかかる。隣にゼシカが居るというだけで、布団の中は一気に暖められた。 しかし、エイトは布団が温かいのも冷静に感じてはいたが、自分自身がそれよりも温かくなっている事が気になって仕方なかった。エイトの身体は温かいを超えて、熱いというか。 「エイト」 「なに…」 少しトーンの落ちたゼシカの声に、ビクンとなる。 「もしかして、眠れない?」 暖炉の灯火に微かに揺らめくゼシカが見える。寝そべった彼女は、いつも結わえている髪を下ろしてこちらを見つめている。それより少し視線をおろせば、乳房が重力に任せて深い谷間を作っている。 「…ちょっと、熱いかな…」 拒もうとも、エイトの本能がそうさせる。艶めき立った光景に目が離せず、身体はなお火照っていく。 「…ねぇ」 丸めた身体を伸ばして、ゼシカがエイトにすり寄ってきた。 「その熱、とってあげるよ」 「え…」 エイトは驚きながらも、緊張して身体が動かない。ゼシカの大きな瞳が、自分を映しているのが分かる。二人の距離がもの凄く縮まって、弾力のある桃色の唇がエイトのそれを覆ったとき、エイトの身体は更に熱くなった。 こんな事になるなんて。エイトは一瞬、躊躇した。理性は現状を整理しようと懸命ではあるが、身体は正直にゼシカに応えている。彼は無意識のうちに、いつのまにかゼシカの身体を抱きしめていた。ゼシカの腕も、エイトの背中にスルリと絡む。 「ん…」 唇が離れないのは、エイトの本能が確かに彼女の柔らかさを求めているからだろう。貪るようにその弾力を味わい、輪郭を確かめた後は舌が這い出ていた。歯列を割って侵食する舌は口内まで入り込み、全てを喰らう。 お互いがお互いを貪っているのは、舌だけではなかった。ゼシカはエイトのシャツに隠れる首筋を探り、筋の流れに沿って撫でていたし、エイトはゼシカの小さい肩を抱きかかえ、風呂あがりの滑らかな肌を確かめていた。 呼吸も止まるような激しい唾液の交換に、二人は息を荒くしていた。乱れた呼吸の合間に、ゼシカは濡れた唇で言う。 「私も熱っぽくなってきちゃった…」 伏し目に微笑したゼシカは、とても淫猥で、とても美しい。彼女が伏した瞳を上げて、再びエイトを見たときには、エイトは彼女の服を剥ぎ、その鎖骨に唇を押し当てていた。 「あっ…」 胸に埋まるエイトの髪がフワリと匂う。湯上がりの髪はまだほんのり湿っていて柔らかい。ゼシカはその髪を撫でながら、彼の愛撫に悶えた。 エイトの唇が、やがて鎖骨の下にある女性の膨らみにたどり着く。彼の右手は、手にもってあまる程に豊満なその乳房の片方を包み、もう片方を唇で愛した。 「んんっ、あっ…ぁ」 泣くように甘い声が部屋を満たす。漏れるゼシカの鳴き声に、低いエイトの激しい息づかいが聞こえる。 エイトが、はちきれそうに膨らんだ胸の先にある桜桃色の突起を弄んだ。指と舌で、ときおり軽く歯を立てて。ゼシカの四肢がビクンと波打った。 「…やあぁ…んっ」 ゼシカはエイトの愛撫に耐えながら、彼の服を脱がしていく。肌蹴た服からチラとのぞくエイトの身体は、細くはあるが締まっていて逞しい。ゼシカが恍惚とした表情でそれを眺めた。 「…エイトって、色っぽいよね…」 「…? そうかな…」 「そうよ」 乱れた呼吸で交わす言葉。一瞬だけ、普段通りの二人に戻る。 エイトが身をおこしたので、ゼシカは彼を完全に脱がせた。彼のたおやかな全身を見て、改めて思う。彼は美しいと。 エイトもまたゼシカの肌蹴た服を取り払った。エイトが一言、綺麗だねと言ったので、ゼシカは笑って彼に口付けをした。何回も重なって求め合う、唇と身体。相手の全てに触れて、知りたいと思う。その形から弾力、そして本能の姿を。 エイトの指がゼシカの茂みに入り込み、誰も知らない場所へ這う。そこは十分に濡れていて、彼の指が動くたびに艶かしい音を出した。 「…あんっ、あぁっ、ん!」 エイトは彼女の切ない声を聞きながら、何処が最も彼女を鳴かせるのか探していた。時折、彼女の身体がビクンと激しく波打つと、その核心を優しく攻めたてる。 「んっ、んっ…」 「ここが、いいの…?」 童顔の可愛らしい顔を見せて、子供のように言うエイト。ゼシカを言葉で攻めるという確信犯ではなさそうな点が、更にゼシカを感じさせる。 (エイトって、犯罪的) 溢れるゼシカの愛液に導かれ、エイトの指は窪みに侵入した。中指が吸い込まれるように入っていく。 「ああぁ…」 ゼシカは自らに分け入ってくるエイトの指に、息も絶え絶えに反応した。この想いを伝えようと、彼女の指はエイトの背中を掻き毟る。 エイトの指は、その中で更に動いた。指の節や腹が当たると、ゼシカの全身がくねって身悶える。中からエイトを誘う愛液が次々に溢れてくる。人差し指までが入ってきて抽挿を繰り返すと、ゼシカは淫らに顎を上げた。 「あぁ…エイト、お願い…」 大きな瞳に涙を浮かべて、ゼシカが懇願した。 「エイトが、欲しい…」 既に先走りしていた、いきり立つエイト自身をいとおしそうに眺め、ゼシカが言った。 「僕も…ゼシカに入りたい…」 エイトは彼女の懇願に応えて、彼女の足を抱えてゆっくりと注ぎ込む。ゼシカの中で、ググッと何かが押し込まれる。 「あ…ん…」 「はっ…」 二人が繋がった。うっすらと瞳を閉じて、口で荒い息をする二人。この上ない淫らさと悦び。 エイトが腰を動かした。確りと繋がっていられるように、ゼシカの肩を抱きながら、その中で動き回る。 「エイト、…すごいっ、ん…」 エイトの動きが速くなった。ベッドのスプリングがギシギシと鳴る。突かれる度にゼシカの乳房は上下に揺れて、汗で光る身体と共に美しく踊った。エイトはその片方の乳房を手で覆い、こねるように愛撫する。 「あん…あぁ…、あっ…!」 突き上げてくる快楽に、ゼシカは正直に声を出していた。自らの官能を訴えるように、エイトの胸に爪を立てる。 分かっている。ここがどこであるか。抱いているのは誰なのか。しかし、それ以上にエイトは求めていた。淫らな彼女をもっと味わいたかった。脳裏に理性がかすんでも、今はただ獣のように、目の前にある肉に柔らかさに涎を垂らし、雌の匂いに尻尾を振りたい。何も考えずに、快楽に身を委ねたい。 「…ゼシカ…ッ!」 くぐもった声で、エイトが荒い呼気の合間に名前を漏らす。 「エイト…エイト…」 眉をひそめて、瞳には大きな雫を溜めて、ゼシカはエイトを呼んだ。その声に応えるようにエイトが腰を動かして、更に彼女を突き上げる。 エイトをもっと感じようと、ゼシカの腰も動いていた。細い腰は、エイト自身から全てを貪ろうと吸い付いている。ヒクヒクと締め付けて、エイトから離れない。例えようのない淫靡な感触。ずっと味わっていたい、官能の夜。 「あぁん、エイトっ!」 「は…」 繋がりあって、喰らうようにお互いを感じ合い、そのまま二人はベッドに果てる。繋がった先から脊髄を通って伝わる至上の快感。つま先から頭まで、痺れるような快感が身を走る。 かすれる息を交わしながら、エイトはゼシカに倒れこんだ。 いつのまに眠っていたのだろう。厚いカーテンから差し込む光に重い瞼をこじ開けられ、エイトは目を覚ました。隣には、穏やかな寝顔を見せる裸のゼシカが居る。 (…ゼシカを抱いてしまった) 昨日は雄の本能で彼女を貪ってしまたが、朝は流石に冷静である。静かに眠るゼシカとは裏腹に、エイトの心は穏やかではなかった。 「…エイト?」 ゼシカが眼を覚ました。朧げに自分を見つめるゼシカが堪らなく可愛らしい。 「おはよう」 ゼシカは普段通りの笑顔を見せた。 「エイトったら。昨日あの後、すぐ寝ちゃうんだもん」 顔は普段通りであったが、布団の中の彼女は裸だし、口から出る言葉も生々しい。ゼシカは冗談っぽく膨れて見せたが、それに付き合える余裕はなかった。エイトは静かな雪の朝には不自然な程、動揺している。 「どうしちゃったの?」 まさか本人を前にして、「君を抱いた事に動揺している」とは言えない。何でもないと嘘をついて、照れくさそうに服を着る。 「…今日は薬草園に行こう」 裸で見つめるゼシカの視線から逃げるように、エイトはベッドを降りた。暖炉の火を調節すると、その前で袋を広げ、たどたどしい手つきで装備品を確認し始めた。早く宿を出た方がいいと思った。 「ね、エイト」 「…うん?」 ゼシカが毛布を羽織ってベッドから這い出てきた。装備品を広げるエイトの背中に近づく。エイトはドキリとした。 「昨日の事、気にしてるの?」 全くの図星だ。何て言ったら良いのだろう。 「えっ…あー、うん」 何とも曖昧な返事の上、エイトは「うん」と言ってしまったことを後悔した。 ゼシカは小走りでエイトの前に回りこみ、ドキドキしているエイトを見るとクスクス笑った。 「エイト、かわいい」 悪戯な笑顔を見せるゼシカ。昨日はとろけそうな瞳で自分を「色っぽい」と言ったのに、エイトは内心そう思った。するとゼシカは更にエイトに近づき、耳元に唇を寄せて小さく言った。 「昨日は、ありがと」 チュッと頬にキスされる。エイトは慌てて手に持った袋を落としてしまった。ゼシカはその様子に声を出して笑うと、毛布のまま浴室へパタパタと駆けて行った。 「シャワー浴びてくるね」 暫くして、水の音が聞こえてくる。エイトは大きく息を付くと、肩をうなだれた。 (ゼシカって、すごいかも…) |
【あとがき】 どうしよう、って思ってる心の底では満足させれたか気にしてたり(笑)。 |