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したたかな彼女。 小悪魔のように可愛らしくて意地悪で。 悪戯な笑顔で、君はまた僕を魅了する。 ポルトリンク ゼシカがポルトリンクに行きたいと言う時は、彼女が精神的に弱っている時だとエイトは知っている。しかし彼はそれを本人には告げず、「ルーラして」とだけ言う彼女を黙ってそこへ連れて行く。 気の強い彼女のことだから、リーザス村の懐かしい顔に甘えたいとは思わないのだろう。何せ母親と対立して、半ば勘当のような形で村を出たものだから、折れそうな心を晒せる場所ではない。 「エイト」 日も暮れて、今日も野宿かと野営の用意を始めたとき、ゼシカがエイトの袖をつまんでポツリと言った。 「…ゼシカ」 エイトは一瞬だけ困った顔を見せたが、トロデ王に断って予定を変更し、少しふんばって湖畔の宿屋へと向かった。彼女の願いを聞いてルーラした頃には、空に星が見えはじめていた。 ポルトリンクに着けば、威勢の良い船乗りが景気良く迎えてくれた。ここの船乗り達に人気のゼシカは、彼らの挨拶に穏やかな笑顔で応えて灯台へと向かう。酒場の喧騒を適当にあしらい、ゼシカは外へ出た。 エイトはそんなゼシカのあとを黙ってついてきた。 ゼシカは灯台から無言のままリーザス像の塔を眺めている。潮風に結った髪をなびかせて、遥か遠くを見つめている。後ろではエイトが黙ってその様子を見守っているが、彼女は何も言わなかった。 「エイト」 暫くしてゼシカが言った。 振り返りもせず、小さな背中を見せながら、彼女は落ち着いた声で切り出す。 「私、ここでエイトの仲間になったのよね」 大きな緋色の瞳は、小さく見える塔を確りと捉えていた。 「…そうだね」 エイトの声が優しい。 背中から感じる彼の存在を確かめようと、ゼシカは瞳を閉じた。 「無理言って、ごめん。皆、怒ってるかな…」 「ううん。宿屋に泊まれるにこしたことはないよ」 ゼシカはここに来るまでを思い出す。 ククールが「何でエイトなんだよ」と膨れながら二人を見送っていた。ルーラが使えて、自分にある程度の感情を抱いている彼にとっては気になることだろう。しかし彼は一言そう呟いただけで、それ以上は言わなかった。 「…」 他人の感情に目敏い彼は知っている。 自分がエイトに好意を抱いていることを。焦がれる程に熱く、削られるように切ない慕情を持っていることを。 見透かされたような感覚にゼシカはふっと笑みが零れた。 「あいつ、自分の気持ちには鈍くって、偽ってばっかりなのにね」 「…何?」 「ううん、何でもない」 クスリと笑ってゼシカは振り向いた。 酒場から漏れる僅かな光に照らされたゼシカは、夜の闇の中で輝いていた。エイトはその美しい微笑みを見ながらも、彼女の心が晴れたか不安で、彼女につられて笑うことは出来なかった。 どうしたら彼女の不安を取り除くことができるのだろう。エイトがそう思っていると、ゼシカが彼に近づいてきた。 「エイト、帰りたくない」 いつもなら、彼女は自分自身で心を整理し、ここでの景色を眺めれば「じゃあ帰ろっか」と晴れやかな笑顔でエイトの袖を引くのであったが、今日はどこか違う。 気付けばゼシカは胸元の服を掴んで、上目遣いでエイトを見つめていた。 「…ゼシカ」 咄嗟に距離を取ろうとするエイトを、彼女の瞳は逃さない。ねだるような、強くて甘い視線。 こういう時の彼女には勝てたためしがない。今から皆と合流しても、外で休んでいるトロデ王に煙たがられるだけだろう、エイトは己の心にそう確認させながら、ポルトリンクの宿屋へ向かった。 部屋に入る。ゼシカはベッドに腰掛けて、隣で道具袋の中を確認するエイトを静かに見ていた。 床に座り込んだエイトは、彼女の視線に気付きながらも、敢えて何か言おうとはせず、普段通りに過ごしている。剣の状態を確認しようとしたその時、ゼシカが口を開いた。 「時々、不安になるの」 「…うん」 「このまま、暗黒神が世界を支配してしまわないかって…」 「皆、口に出さないだけで、不安がってると思うよ」 エイトはそう言って笑った。 「…いつもは真っ先にゼシカが否定するんだけど」 まだ研がなくても刃はもつだろうと判断したエイトは、剣を鞘に収めた。振り返ってゼシカを見ると、彼女はうな垂れたままだった。 「今のゼシカ、『ゼシカらしくない』って言ったら、怒る?」 優しい笑顔で言うエイトに、ゼシカも少々の笑みが零れる。 「私だって、私らしくするの嫌になること、あるのよ?」 いつものような元気はないが、憂いを溜めたような微笑はそれで美しい。普段は見せない流し目も、旅をしていては中々気付かない彼女の女性の部分をのぞかせている。 「でも、こんな乙女心なんて皆は分かってくれないから、頑張らなくちゃダメじゃない?」 耳が痛い、とエイトは苦笑した。 しかしゼシカは分かっている。彼こそが自分のこの気持ちに気付いて、こうしてルーラを使って自分の我儘を聞き入れてくれたのだ。 エイトも、彼女が自分を本気で責めているのではないと分かっている。彼女が冗談で己をなじるようになれば、少しは気が休まったのかもしれないと密かに安堵した。 「ここに来たら、初心を取り戻せるかなって、思ったの」 ポルトリンクは、ゼシカにとって旅の始まりの場所だった。此処の灯台からリーザス像の塔を見るたび、兄の仇を討つ闘志を改めて確認できる。 そして、一連の事件でエイトと出会った時の事を思い出して、懐かしむことも。 「エイト」 ベッドに座っていたゼシカが、背後からエイトの首に腕を絡めてきた。鞘に収めたとはいえ、剣を持っていたエイトは背中の感触に驚く。 「ゼシカ、危ない…」 「剣、置いて」 仕方ない、という風にエイトが剣を床に置いた。甘え上手のゼシカに少し照れながら、彼女を宥めるように言う。 「落ち着いたら、皆と合流するよ」 「明日になれば、落ち着くから」 ゼシカは聞き流しながら、しなだれかかった腕でエイトの胸を擦った。 「ちょっ…ゼシカ…」 「何?」 恥ずかしそうにエイトが振り返ると、ゼシカはその唇を塞いだ。両手でエイトの顔に触れ、しっとりと唇を包む。 後ろ向きの体勢の悪さに身を捻っているエイトは、少し強引な彼女のキスに身体を向けてしまう。 「…ん…っ」 床に胡座をかいていたエイトにゼシカが入り込む。脚の間に身を入れて、ゼシカはエイトにぴったりと身体を寄せた。 薄く瞳を開けると、エイトが困ったような顔で応えているのが分かる。それでも彼が瞳を閉じているのは、拒否できない彼の優しさ。ゼシカはそんな彼をいとおしく感じた。 唇を離して彼を見つめると、エイトは頬を赤らめながら下を向いていた。 「…やっぱり、こんなこと駄目だよ…」 「どうして?」 ゼシカは意地悪に微笑んだ。愛らしい小悪魔の表情。ゼシカは床に座り込むエイトの手を取って、ベッドをポンポンと叩いた。 「座って、エイト」 落ち着いて諦めてくれたのかな、とエイトは内心ホッとしてベッドに腰掛けた。開放された安心感で、平常心を取り戻そうとしたのも束の間。 その時。 ゼシカは腰掛けるエイトの脚を割って、細身の躰をスルリと入り込ませる。驚きの表情を露に見せるエイトにあどけない笑顔を見せると、ゼシカは再び彼の唇を味わった。 「な、ゼシ…」 柔らかい唇は形を確かめるように触れている。エイトは声を塞がれ、ゼシカの艶やかな唇に下唇も上唇も堪能された。 ゼシカは戸惑うエイトを流し目に見て、白い手を彼のズボンの上で這わせている。ズボンの上からエイトのそれを確かめるように指でなぞる。 「…ゼシカッ」 自分自身に触れられた驚きは相当なもので、堪りかねたエイトがゼシカの肩を掴んで引き離そうとした。 「駄目だって…」 「イヤなの?」 この上ない微笑。それは聖母のようで娼婦のようでもあり。彼女の極上の笑みを前にして、この行為を強く否定できない自分が居る。 「‥‥‥嫌じゃないから駄目なんだよ…」 火照った顔で、困惑の顔を見せるエイト。ゼシカの胸はその愛らしさに占められる。 エイトの言葉を理解したのかどうか、それも聞き流してゼシカは更に彼に触れた。今度は軽く触れるだけでなく、確りと手のひらで形を探り出した。 彼が本能的にこの刺激に反応しているのは分かる。それは次第に大きくなって、布越しでも興奮している様子が見えた。 「エイト、かわいい」 「…何言って…」 かわいいと言われて少しムッしたのか、エイトは戸惑いの中でも僅かに不満そうな顔をした。正直に反応しているエイト自身と、彼の姿にますます愛しさが溢れてくる。 ゼシカはエイトの肩を掴んで、自分の体重に任せて彼をベッドに押し倒した。ポフンと弾力あるベッドにエイトの身体が沈む。スプリングが二人の身体を何回か弾ませた。 状況を把握しようと必死に頭を整理しようとしているエイトを見ながら、ゼシカは彼のベルトに手をかけた。しゅるりとそれを外して、ズボンの中を手でまさぐる。場所は彼が教えてくれているから、直ぐに捕らえられた。 「エイト、大好き」 そう言ってゼシカは下着から彼自身を取り出すと、いとおしそうに両手でそれに触れた。細い指で、なぞるように軽く触れまわる。 「あっ…ちょっと…ゼシカッ」 見られた恥ずかしさが官能的な刺激になったのかもしれない。エイトのそれはみるみるうちに大きくなって反りあがってくる。 信じられない光景。 何も言えない。 エイトは目の前に広がる場景に己の目を疑った。しかし、下半身からぞくぞくと伝わる淫靡な刺激は夢ではない。 「エイト、気持ち良い…?」 ゼシカはエイトの脚の間で、ゆっくりと、愛でるように手を動かしている。 これはエイトと繋がっている、正直なもの。エイトそのもの。 ゼシカは、これは彼と繋がっているのだと確かめるように指でなぞる。手の上からのぞく彼にキスする。唇には、ヌルリとした感触。 「もっとしてあげるから」 乱れる呼吸を隠そうと、エイトは手の甲を口元に当てていた。必死で堪えようとしているが、伏し目に映る下半身の光景から不思議と目が離せない。 エイトの声をもっと聞きたい。 熱を帯びた彼の瞳をもっと見たい。 そんな気持ちがゼシカを満たして、彼女は身を屈めた。 「わっ…ゼシカッ…」 彼女の小さな唇は、大きくなったエイトを咥え込んでいく。包みきれない唇は淫らに涎を垂らして、快楽に悶えるエイトの液体と絡まった。 「はぁ…ッ…」 緩んだエイトの口元から吐息が漏れた。エイトは自分自身の声に滅入っているのか、悩ましげに眉をひそめている。色っぽい仕草。 ゼシカの舌はエイト自身に絡み付いて、全てを吸い出そうとしている。きつい圧迫を与えたかと思えば、次はそれを開放して尖った舌で筋を這う。舌から伝う涎と、エイトから流れる涎が混じって、部屋を卑猥な水音で満たした。 「…ん…」 いとおしそうに、伏し目で奉仕を続ける妖艶なゼシカ。時折、上目でエイトの恍惚とした顔を満足そうに見上げている。その全てがエイトを官能に震わせる。 「あっ…もぅ…ゼシカ…」 白濁した彼の液体は、理性の限界に身悶えして流れる涙のようにも見える。エイトは頭を左右に振って、シーツに黒髪を擦りつけていた。彼の恍惚は、今や懇願へと変わりつつある。 まだ足りない。 もっと愛したい。 ゼシカの唇は執拗に彼自身を刺激し、ヌルリと滑るそこで何回も上下に動いた。彼女の白い右手は舌の動きを補うようにエイトを更に攻めていたし、左手は太股から腰あたりの全てを愛撫し続けている。 「…っ…ァッッッ…」 やり場なく遊んでいたエイトの手は、擦り寄るようにゼシカの髪を梳いていた。脚の間でなされる動きを確かめるように、彼女の頭を抱えている。 瞳には現ともしれない光景が映り、耳には淫靡な吐息と水音が聞こえる。ゆらめくような、さざめくような官能の波が押し寄せる。 「は…ぁ…」 重ねて罪悪感と背徳心が甘美な刺激を送り出す。腰から背中、全身を伝わる痺れるような官能。 ゼシカの動きがエイトの限界に近づくまで速くなった。 この時、エイトの身体がドクンと波打つ。 「…ッ‥‥‥!」 彼の全てが震えた。 頂を迎えた身体は、迸る程に熱く欲望を吐き出す。僅かに残った理性が彼女を突き放した。ゼシカの顔に白濁して溢れたものがかかる。 「…っはぁ…」 肩で息をしながら、エイトは脱力したようにベッドに身を委ねていた。あまりの恍惚に身悶えたのか、彼のバンダナはずれている。 「…いっぱい出たね、エイト」 震えたエイト自身を握っていたゼシカの手は、生温い白濁に浸かっていた。ゼシカは更にそれを搾り出すように、エイト自身を上下に扱く。口の開いたそこからは、再び数滴の涙が出た。 ゼシカは握り締めたまま、エイト自身と自らの手と一緒に、それを残さず舐めていく。愛しそうに、味わうように舌を這わせる。もどかしい音を立てて唇に吸い上げる仕草がなんとも色っぽい。 「ねぇ、気持ち良かった?」 恥じらいで満たされたエイトは、ゼシカに返事が出来なかった。頬を赤く染めながら、伏し目に視線を逸らしている。 「…」 ゼシカはその姿を見て、一言「かわいい」と言うと、彼の乱れた服を整えた。そしてベッドに寄りかかり、エイトの顔を見る。少しはだけたバンダナを見つけると、それを取って彼の前髪を掻きあげた。額にはうっすらと汗が滲んでいた。 「…落ち着いたら、皆と合流しようね」 それは先程のエイトの台詞。彼女はクスリと笑ってエイトの額に軽くキスした。 満足そうな彼女の笑顔。 エイトは、「敵わない」といった表情でその微笑みを見ていた。彼女の心が元気に満ちるようにと此処へ来たつもりが、満たされたのは自分の方。 それでいてゼシカは不思議と普段通りになっている。 したたかな彼女。 小悪魔のように可愛らしくて意地悪で。 色気ある悪戯な笑顔で、君はまた僕を魅了する。 「参った…」 締め付けられるような愛くるしい笑顔に苦笑して、エイトは呟いた。 |
【あとがき】 やってしまいました…主ゼシではなく「ゼシ主」! なかなか無いと思いません(笑)? あ、いえ、そういう思いで書いたワケではありませんが。 ゼシカだったらこの位リードしても良いかな?と、大胆なゼシカ推奨!です。 今回のテーマは「小悪魔★ゼシカ」。 恋人同士ではないけど、お互いの気持ちは分かってるような感じで。 |