妄想の堕神官はまだ終わりません。
ここは「魁!氷結クリフト」、底なし沼です。
どれだけ探してもド変態しか居ませんので、
マトモな神官が好きな方は、猛ダッシュでお逃げなさい。
魁!氷結クリフト
第1幕 「ホフマン涙目」
「ソロタウンっていうのはどうでしょう?」
「いまいち」
「ではソロランドで」
「うーん、もっとひねりがないと」
「ソロ横丁ではっ!」
荒野に町を作るというホフマンの壮大な夢は、ソロの協力もあって進行しつつあります。
そこで彼は新しい町の名前を、人生の旅の恩人である彼の名に因んだものにしたいということでしたが、提案されたソロの方は彼のネーミングセンスに首を振るばかり。
「なんかもっと、こう、インパクトがないと」
細顎に指をやり、ソロがうーんと考え始めた時、馬車で待っていたクリフトが猛スピードでやってきました。
「ラブ・サンクチュアリで良いかと!」
「ラ、ラブ……サン、?」
なんでラブ。
ホフマンとソロが同時にポカンとした顔をクリフトに向けると、彼は鼻息荒く演説を始めます。
「ラブ・サンクチュアリ! それは姫様と私の愛の聖域!」
「「え」」
ここ移民の町なんですけど。
「この地はめまぐるしい発展を遂げた後、
「姫様と私が し こ た ま 愛を育む魅惑エリアとなるのです!」
「おい」
確かにサントハイム領だけどさぁ。
人生の目的を見つけた希望溢れるホフマンと、夢を持って町に移住する人々の思いなどは妄想神官の脳裏の隅にも見当たらず、今や彼はアリーナ姫とのラブラブを堪能できるヒミツの町を作り上げています(脳内で)。
「あぁっ! 姫様ったらプールで泳ぎたいなんか仰って!」(ハァハァ)
「目ェ覚ませよ」
「私は畑で育てたお花を用意して待ってるんです!」(はふーん)
「けっこう地味なんですね」
一人暴走する神官を冷めた目で見るソロとホフマン。
すると、同じく馬車から恐ろしいスピードで氷の稲妻が地面を走ってくるではありませんか。
「ウスラ神官が汚い妄想に塗れおって! 死んでおけェェいッッッ!」
「この地の肥やしとなれ! ド畜生がっ!」
そうして氷の魔術師が、冷えた腰をトントンと叩きながら馬車に戻った後には、氷柱の側に「ブライ村」と書かれた看板が立っていました。
哀れ、氷結クリフト。
「ブライ村」で決定。
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