HERO
 
×
 
PRINCESS
※この文章は、暗号解読をするかJavaScriptを解除して、コピーを図った場合に表示されます。
このページは、小説の無断転写や二次加工を防ぐために、マウスコマンド制御やソースの暗号化などを設定しています。というのも、管理人は小説をweb公開しておりますが、著作権の放棄はしておらず、パクられるのがイヤだからです。管理人の主旨をご理解のうえ、小説は当サイト内でのみお楽しみくださるようお願い致します。
愛の伝え方、教えます。

 
 エイトがミーティアの部屋で一晩を過ごして朝を迎える。
 晴れて彼女と夫婦となった彼も、しかし近衛隊長として出仕せねばならない。隣で幼い寝顔を見せるミーティアの額に軽くキスすると、エイトはベッドを降りて部屋を出る。
……エイト?」
 布の擦れる音に気付いて、ミーティアが目を覚ました。
「まだ寝てて良い時間ですから」
 ニコリと笑ってエイトが言った。再びベッドに戻り、起きた彼女に2度目のキスをすると、エイトは長閑に微笑んだ。
「行ってきます」
(まぁ、同じ城に居るんだけど)
 自分の言葉に笑えてくる。それでもミーティアは彼の奥さんらしく見送りの言葉を送る。布団の中から。
「お仕事、頑張って下さいね」
 覚醒してまだ朧げなミーティアはとても愛らしかった。
 
 
 
 
 
 朝の点呼を終えて厩舎の点検にまわった時、ククールがやって来た。
「早いな、エイト君!」
「もう陽があんなだよ。早くないよ」
 エイトはククールの寝坊を嘲笑っているつもりだった。
「違うって。そんな意味じゃない」
 ククールは自分がからかっているのだと言いたかった。彼は厩舎の柵に腰掛けると、懸命に馬の手入れをするエイトの背中をニヤニヤ見ていた。
「で。昨日はあの後、どうだったんだよ」
 エイトが驚いてブラシを引っ掛けた。馬も軽く嘶く。慌てながら振り向くエイトが明らかに動揺しているので、ククールはなお彼を苛めたくなった。
「どう、って」
 彼の態度を見れば、経験豊富なククールはどうだったのかはすぐ分かる。
「うまくいったみたいじゃん」
「うまくって何だよ……
 恥じらいも加わって少しふて腐れ気味にエイトは再び馬の世話を続けたが、その手はたどたどしいし、顔は真っ赤になっている。
「なーんだ、エイト君も男になっちゃったかぁ〜」
 彼の言葉に耳まで赤くしたエイトは、もうこれ以上はとククールを無視することにした。黙々と干草を集めるエイトに、ククールはそれでも畳み掛ける。彼の良い所も悪い所も、人懐こくて人で遊ぶところにある。
「どうだった? どんな感じだった?」
 彼の言葉攻めは旅をしていた時からだった。慣れていたと思ったけど。
「エイト君ったら無口になって、冷たいなぁ! 男同士で話そうぜ?」
 エイトは無視していたが、ククールは知っている。ゼシカには鉄壁の如く無視されることはあっても、エイトはその優しさ故にククールを冷たくあしらうことが出来ない。実際、エイトは聞こえないふりをしてはいるものの、依然として耳は赤いままである。
 このままエイトをからかっているのも面白いが、ククールは思った。彼はエイトが反応するように、不自然な独り言を呟きはじめた。
「まぁでも男としては、彼女を満足してやれたかどうかって気になるよなぁ」
 ククールはエイトの背中を見ながらニヤリと笑って言った。
「男としては、当然『下手』って言われるのが最大の汚点だからなぁ。いい女を落として、手に入れた後でも惚れさせるようなテクが必要なんだよ」
 言葉の途中からエイトが聞いているだろうとは思っていたが、エイトの動きが止まった。ククールは見逃さない。
「な、何? テクって」
「“テクニック”だよ。男としての技量さ」
 エイトとて一人の男なのだから、興味がないわけではない。
「それってカリスマが要るの?」
「言わばウラのカリスマだな」
 まさかスキルの話が出てくるとは思わなかったククールは、エイトがどこまでも面白いヤツだと思った。しかし戦闘に例えていうのも悪くない。
「百戦練磨のククール様が、こりゃあ一度、エイト君にご教授差し上げないとな」
 エイトが千人(匹)斬りのモンスターキラーだとすれば、俺は千人落としの美女キラーだぜ、とばかりにククールの声が大きくなった。
 
 
 
「ゼシカさん!」
「久しぶり!」
 ひとまず母親を安心させるようリーザス村に帰っていたゼシカが、暇を持て余してトロデーン城にやってきた。相変わらず均整のとれた肉体は、トロデーンの文官や侍従、近衛兵すら目を離すことが出来ない。そんな視線をもろともせず、露出度の高い服をビシリときめているゼシカは、色気があるのに清々しい。
「エイトは元気?」
 城を歩きながら二人は他愛無い世間話をしていたが、やはりミーティアはゼシカを見る城の男性の様子が気になっていた。
「ゼシカさんて、魅力的ね」
 ミーティアが羨ましそうに言うので、ゼシカは内心「そんな事はない」と思ったが、敢えて冗談に言った。
「お色気は結構頑張ったつもりよ」
 にこにこと言うゼシカには羨望こそすれ憎めない。ミーティアは「お色気」と聞いて、思いついたように言った。
「おいろけ……
「?」
 ゼシカは考え込むミーティアを不思議そうに見つめた。ミーティアが思い切って口を開く。
「ゼシカさん! 私にお色気を教えて下さいませんか?」
「えぇ!?」
 ゼシカはすっとんきょうな声を出した。城のお姫様が、お色気を身につける?
 しかしミーティアの顔はいたって真剣なので、勘のいいゼシカには分かった。彼女はエイトを想って自分を磨きたいのだ。女性なら誰もが思うことである。愛しい人に更に想われたいと、自分の魅力に誘われて欲しいと。
「いいわ!」
 晴れやかな笑顔で応えたゼシカ。ミーティアの表情がパッと明るくなるのが嬉しかった。
「“そんな事には無縁です”って顔したエイトがメロメロになるのも面白そう!」
 城の者は、何やらキャッキャッと笑いあう女の子二人を長閑な目で見ていた。
 
 
 
 エイトはククールに半ば強制されて魅惑の眼差しを練習していたが、出来はあまり良くなかった。ククールは諦めずに他の技も伝授したが、覚えが悪い。
「エイト。ここまで言った事は分かったか?」
 懇々と諭すククールの隣では、頬を赤らめながらも熱心に聞くエイトの姿があった。
「うん。でも先刻の『エッチな言葉攻め』っていうのは出来ないよ……
「馬鹿だな! それは究極のテクなんだから、習得しないと駄目なんだよ!」
 彼に全てを教えても、出来るかどうかが心配である。ククールは一息ついて、まぁでも、とエイトを見た。
「全てにおいて男には“余裕”が必要だ。テンパッたらアウト。それだけは覚えておいた方がいい。基本だ」
 
 
 
「コレなんかどうかしら?」
「素敵ですわ」
 セクシービームを習ったところで、丁度営業で城を訪れていた仕立て屋から、ゼシカとミーティアは好き放題に衣装を見せて貰った。
「姫のクローゼットには無いタイプだけど、違った感じの服も持っているといいわよ」
 ゼシカは露出の多い服が好きだった。一国の姫が来て良いものかどうかはともかく、ミーティアにも一度は違った服を着て欲しいと思った。
「エイトはこんなの好きでしょうか」
 バニースーツを手に取り、不安げに呟くミーティアを見て、仕立て屋も乗ってくる。
「男性を魅了する服でしたら、こちらなどは?」
 更に荷を解いて取り出した服の山々からは、続々と過激なものが出てきた。中には女性でさえ恥ずかしくなるような服さえある。エイトの困ったような顔を思い描くと、ゼシカはワクワクしてくる。
「これに合わせた下着などのトータルコーディネートをお勧めしますよ」
 最終的にはミーティアに仕える侍女さえ加わって、女性だけの会議は延々と続いた。
 
 
 
 一日の仕事を終え、風呂にも入り、ゆったりとしたエイトは心だけが落ち着かなかった。ククールに色々な事を聞いてしまって、どんな顔をしてミーティアと会えばいいのだろう。教わったテクとやらの一つでも試すべきなのだろうか。
 悶々としてミーティアの部屋に戻る。彼女は普段通りの無垢な笑顔で癒してくれるに違いない。
 しかしエイトは扉を開けて仰天した。いつもは踝までのドレスを着ているミーティアが、太股まで露になったワンピース姿になっている。
「ど、どうしたんですか?」
 エイトは旅の後半で見たゼシカのビスチェを思い出した。勿論あれほどではないが、細い肩や大胆に開いた胸元が覗く。一瞬、エイトは守備力がいかほどかを疑った。しかし今はそんな事などどうでも良い。
 エイトは目のやり場に困った。淡いピンクのワンピースは美しく輝いて、ミーティアの滑らかな白い肌も光っている。
「エイト、セクシービームです! えいっ!」
 ミーティアは畳みかけるように、ゼシカ直伝のセクシービームを放った。お色気ムンムンとまではいかないが、可愛らしいピンクのハートはエイトに直撃する。
「うわっ」
 エイトは腰を抜かしてしまった。
「あっ」
 驚いてミーティアがエイトに駆け寄った。まさか腰を抜かすとは思っていなかったのである。
「エイト、大丈夫?」
「あ、はい……。ちょっと、いやかなり驚いてしまって」
 ごめんなさい、と小さくミーティアが言った。立ち上がってエイトが起きると、ミーティアは心配そうに言った。
「エイトが、喜ぶと思ったんですけど……駄目でした」
「僕が?」
 計画が失敗したミーティアは、恥ずかしそうに言った。
「ゼシカさんみたいに誰もが見惚れるようなお色気に憧れて。エイトだって、あんな素敵な女性が好きだろうと思って」
 エイトは最初は驚いていたが、頬を赤らめながらも一生懸命に喋るミーティアを見ていると、次第に暖かい笑顔になっていく。伏し目にミーティアが言葉を続けた。
「でも私、ゼシカさんのようなお色気もありませんし、お胸もなくって」
 エイトはミーティアが話し終えるのを待って、彼女と目が合うと、それから優しく言った。
「そんな事ありませんよ。姫は今のままで十分魅力的です」
 エイトもこの扉を開けるまでは、どうにか背伸びをしてミーティアに良く思われたいと思っていた。そんな事しなくてもいいのに、と気付く。
「僕達は僕達のままで良いと思いますよ」
 慌てているミーティアも愛らしい。エイトは彼女の柔らかい頬を撫でた。
「エイト」
 折角の努力が空振りに終わって残念であるのと、それでもエイトが微笑んでくれて嬉しいこととで、ミーティアは複雑な気持ちになった。困った風に笑顔になる。そんな彼女をひょいと抱え、エイトはベッドに運んだ。
 ベッドで照れながらエイトを見つめるミーティアに、「でも」とエイトが言う。
「今日の貴女も、色っぽくて好きですけど」
 彼女の髪をいとおしそうに撫でながら、エイトは唇を寄せた。淡いピンクの生地は儚げに透き通る肌を引き立てる。肌触り良い絹の感触。その中には更に心地よい感触のミーティアの柔肌。
 弾力のあるミーティアの唇を確かめながら、エイトの手は彼女の全ての肌を感じ取る。ほのかに熱を帯びた柔らかい美肌が彼を誘う。
「ん……
 長い唇の触れ合いに恍惚と瞳をまどろませるミーティア。彼女はこんなにも美しいのに。それ以上に僕を喜ばせようと?
「エイト、大好きです」
 ああ、この人は。僕を更に貴方の深いところへと誘い込む。もっと見たくなる。僕の名前をいとおしそうに呼んで、甘い刺激に細い身をくねらせる淫らな貴方を。エイトはそう思いながら、たおやかに肩にかかっていた紐を払った。
 エイトがまた吃驚絶句するようなきわどい下着をつけていることなど、全く知らずに。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【あとがき】 そうして姫を玩ぼうと始まったのが、あの連載ギャグ小説です。
 
 
 
主姫書庫へもどる
MENUへもどる
     

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!