HERO
 
×
 
JESSICA
※この文章は、暗号解読をするかJavaScriptを解除して、コピーを図った場合に表示されます。
このページは、小説の無断転写や二次加工を防ぐために、マウスコマンド制御やソースの暗号化などを設定しています。というのも、管理人は小説をweb公開しておりますが、著作権の放棄はしておらず、パクられるのがイヤだからです。管理人の主旨をご理解のうえ、小説は当サイト内でのみお楽しみくださるようお願い致します。
 
 
 
その細胞、限界原形質分離につき。
 
 
 
 夜、ゼシカは僕のベッドに入ってくる。
 「一人で眠るのが怖い」と言って、開けた扉の隙間から顔を出した彼女を迎え入れたのが最初。二度目は「寒いから」、三度目は「寂しいから」。何かと理由をつけて部屋の扉を敲く彼女を、僕は戸惑いながらも結局は受け容れて、三度目以降は理由も聞かなくなっていた。最近は僕がどうしたのかと彼女の顔を窺う前にそっと胸元に寄ってくるものだから、僕は静かに扉を閉めて、そのままベッドに彼女を案内している。
……
……
 ベッドに入る時も、入った後も。いつもは何も言わずに朝を迎える。ゼシカは僕の心臓あたりに手を添えて、僕はゼシカの背中を抱いて、お互い身を寄せ合って眠るけど、それ以上の事はしない。僕が内心期待しているような甘い睦事も一切交わさない。ゼシカが静かな寝息を立てるのを聴いて、僕はホッとしたようなガッカリしたような気持ちになって、それからようやく浅い眠りにつく。
「ゼシカ」
 いつもなら彼女のままに任せている僕は、今夜初めて彼女に話しかけた。
「これってどういう事だろう」
「これって?」
 低い声でポツリと呟いただけの問いに、ゼシカもまた小さな声で語尾を上げて問うてくる。聞きたいのは僕の方なのに、ゼシカは閉じていた瞳を薄く開けただけで身動きひとつしなかった。
「僕達の関係って、」
 ただの友人では一緒のベッドには入らないだろうし、だからと言って恋人同士がするような事はしていない。大切な旅の仲間には違いないが、僕はヤンガスやククールと同室になることはあっても同じベッドに寝たりはしないし、女の子であるゼシカの感覚が違うのかと思いきや、彼女が他の仲間と一緒に眠ることはないと言う。
 でもゼシカだって知っている筈だ。男の部屋に入る、それだけでもどんなに危険かというのに、その男のベッドに入って一緒に寝るっていうことは、そこから先の事を受け容れていると思われても可笑しくないということ。僕だってそういう「男」の一人だっていうことも、理解ってる筈なんだ。
「僕は君の兄さんじゃないよ」
「兄さんとはこんな事しないわ」
……
 僕はゼシカが思うほど寛容じゃないし、神でも僧侶でも不能でもない。そう思って言った言葉は更に分からない返答で消されてしまった。そうして僕の悩みと欲求はまた深い迷路を彷徨うことになる。
……ゼシカは僕にどうして欲しい?」
 僕はククールみたいに気が回るほうじゃないから、ゼシカの気持ちがよく分からない。彼女が望むなら抱いてあげたいし、正直僕はゼシカを抱きたくて堪らない。
 暗がりに白い肌を妖艶に輝かせるゼシカは息が詰まるほど綺麗で、湯上りの甘い香りを漂わせて傍に眠る姿に毎夜苦しくなる。柔らかい髪が差し出した僕の腕に触れて、瑞々しい脚が僕のそれに絡んで、温かい寝息が鳩尾を擽って。そして何より、日中は大きく開いている勝気な瞳がしっとりと閉じられて穏やかな寝顔を見せる時、僕はどうしようもなく彼女が恋しくなる。触れて愛したくなってしまう。
 「抱いて」と言われれば抱かない筈がない僕の問いに、俯いていたゼシカは半身を起こして僕を下に敷いた。少し身体を捻らせ、両手を僕の肩あたりに付けて俯瞰するゼシカは、暗闇に大きな瞳を煌かせて僕を見つめる。
「じゃ、キスしてみる?」
 真剣なのか、笑っているのか。彼女の表情が読めないのはきっと暗がりのせいじゃない。囁くように呟かれた彼女の声も、僕にはどんな感情がそこにあるのか掴めなかった。
「キスしたら分かるかも」
 僕を組み敷いて見つめるゼシカは、普段は結っている髪を解いて華奢な肩を隠し、大人っぽい眼差しを真っ直ぐに降り注いでいる。胸元で佇んでいた彼女が半身を起こした時は突然の出来事に緊張したものの、見つめ合って視線を繋いだ僕は、逆に彼女の肩を掴んで起き上がり、ベッドの弾力に任せて押し倒した。
「、」
 今度は僕が両手をゼシカの肩あたりに付けて俯瞰する。起こした半身はゼシカのすぐ上にあって、彼女の身体を組み敷いた。
 僕の反撃に驚いたゼシカは、ベッドのシーツに皺を作ってやや身動ぎしたみたいだけど、それも一瞬だけだった。僕に彼女を襲うほどの攻撃的な視線を感じなかったのだろう、瞳を合わせたゼシカはまた感情の読めない表情で僕を見つめていた。
 僕は今しがたの反動とは真逆の静けさで言う。
「僕は君の兄さんじゃないから」
「うん」
 ゼシカの返事を聞いて更に言う。
……キスしたら、きっとその後は止まらなくなって」
「うん」
「最後までいって、」
「うん」
「でも訳が理解らないままそうなるのは嫌だから」
「うん」
「このままで良いかもって思ってる」
 結局は僕も臆病者。情動に任せられない意気地なし。
 彼女が僕を求めていたとしても、僕はきっと抱けないだろう。衝動に任せて抱いた先に、僕が望んだものはないと思うから。そしてゼシカもそれを望んではいない気がするから。
 僕は、僕達は、そんな結末を迎えたくはない。
……
……
 僕がゼシカに覆い被されば、彼女の唇にキスしたら答えが出る。ゼシカが僕の首に腕を回して、瞳を閉じれば全てが始まる。でも、僕達は見つめ合ったまま動かない。
 沈黙が暫く続いて、無言で視線を繋ぐうちにゼシカが口を開いた。
……私と同じだね」
 小さいけれど、確りとした声が僕に届く。
「私もエイトとこうしてるのが良いんだ」
 そう言った彼女は、次に僕の返事を交わすように畳み掛けて言った。
「狡猾くてごめん」
 ゼシカは上目に謝って、そうして初めて口元に小さな笑みを作った。その意味は鈍感な僕だって理解る。
 僕は苦笑に似た彼女の美しい微笑につられて薄く笑って「ううん」と言うと、彼女と同じように謝っていた。
「僕も狡猾い」
 そうして僕は彼女の肩上に押し付けていた腕を解いてベッドに沈み、再びゼシカの細身を抱き締めて寝る。ゼシカは再度差し出された腕に頭を預け、ゆっくりと瞳を閉じて穏やかな眠りについた。そうすればいつもと同じ夜になる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 僕達は一緒のベッドに眠るけど、それ以上は何もしない。
 でも僕はこれでもいい。
 いや、僕達はこれでいいんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【あとがき】 女の子は、答えの手前まで引き寄せてくれるワリには
その答えを男の子に出させるような所がありますよね。
でも、女の子だからそれでも良いと思うのです。
それに応えるが男であり、これを制するのも男なのですから。
 
あ、でも決して決定権が男の子にあるという意味じゃありませんよ。
結局、恋愛の主導権は女の子が握っているほうが面白い!
 
 
 
「プチラブ。」へもどる
主ゼシ書庫へもどる
       

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル