HERO
 
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JESSICA
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レインボウ、レインボウ。
 
 
 
 ゼシカに表情が乏しいと言われた僕は、彼女の表情を見て確かにその通りだと思った。
 ゼシカは本当に表情が豊かで、トロデーンの天気より変わりやすければ、パルミドの町より複雑だったりする。彼女に言わせて見れば、誰だって無表情に思えてくるほど、その表情は多彩だった。
「ラパンさん、相変わらずだったわね」
「うん。元気そうだった」
 キラーパンサー友の会の定例集会に参加した帰り道、僕達は決まってバウムレンを天国へと見送った場所でとりとめのない話をする。
「友の会のメンバー、増えてなかったね」
「そうだね」
 ゼシカは口下手な僕をよく理解してくれていて、相槌を打つだけの僕にでも色々と話しかけてくれる。
 こうして話している間にも彼女の表情はクルクルと変わって、バウムレンと話した時の事や、初めてキラーパンサーに乗った時の事などを弾むように話している。
「でもね、キラーパンサーとも友達になれるなら、他のモンスターだって友達になれると思うの」
「うん」
 多分、君の感情は虹より多彩だ。
 言葉ひとつひとつで表情が変わるのは、その言葉に彼女自身が表れているからなんだろう。ゼシカが木々の枝を見上げて会話するなか、僕は彼女の横顔をそっと見つめながらそう思った。
 怒ったときは烈火の如く、笑顔は太陽のようで、悲しみは月光に似ている。野を駆ける様は光を浴びて、戦闘時にはそれが更に鋭く輝き、そしてドルマゲスと対峙した時に見せた青い稲妻は、深い憎悪の朱を超えた、君の正義の怒りだった。そんな彼女の深い藍の涙を見た時は、胸が千切れそうになったのを覚えている。
 ゼシカが豊かに表情を変えることで、僕の心の中も虹のように揺れ動いていたんだ。
「人間にも善い人と悪い人が居たでしょ? きっとモンスターもそれと一緒」
 真剣に話す君の真っ直ぐな瞳がいいと思う。
 僕は彼女が話すままに相槌を打って聞いた。
「モンスターをスカウトできるんだもの。きっと本当は仲良くなれるんだわ」
「ゼシカはピエールととても仲が良かったよね」
「えぇ。通じるものがあったのよ、きっと」
 二人、大きな木の幹に寄りかかり、葉の隙間から差し込む光に目を細めながら風を感じる。
 青々と茂る木々の葉が風に揺られて涼やかな音を立てるのを、ゼシカは見上げて穏やかに言った。
「ほら、ピエールだってスライムと相性があると思うの。スライムナイトはスライムと一心同体じゃないといけないでしょ?」
 僕は彼女が話している間、ただ、今こうして話している時間がとても惜しいと思っていた。
「チームを組んだ時だって、種族を超えたチームワークが力を発揮していたわ。きっと何か生命を超えた絆が、……
 君をずっと見ていたい。
 ゼシカと見詰め合うのは、なんとなく恥ずかしくて上手く出来ないけれど、こうやって同じ方向を見つめているのは安心するし、何故だか感謝の念が湧いてくる。それは僕に勇気をくれたのが、いつだってこの瞳だったからなんだろう。
 木漏れ日が差し込んで輝いた彼女に、眩しすぎて僕は思わず目を細める。
 そして光を遮るように陰になって現れたゼシカの顔を正面に見て、僕は初めて彼女の話が止まっていたことに気付いた。
「? ゼシカ?」
 いつの間にか僕の方を見ていたゼシカは、逆光で一瞬よく見えなかったけど、何かにとても驚いているようだった。
「どうしたの」
「あ、うん……
 急に俯いて言葉少なになった彼女に、僕は少々焦ってしまう。
 話は聞いていたつもりだけど、正直ゼシカに見惚れていたから、深い所まではよく考えていない。それとも僕がまた無表情だったから、不安にさせてしまったのだろうか。
 とにかく何かを言おうとして僕が唇を動かした時、ゼシカは零れるように微笑んで言った。
「あのね、今エイトが笑ったの、すごくいいなぁって思って、驚いちゃって」
 心なしか頬が赤くなっているように見えた。
 
 
「私、エイトの事がすごく好きなんだなぁって、思ったの」
 
 
「、」
 僕の開いた口からは、何も出なかった。
 僕を見つめてそう言うゼシカの表情は、今までに見たどんな彼女よりも綺麗で、七色の虹さえ彼女の色を表すことができないだろう。今のゼシカの美しさを、誰より彼女自身に伝えたいのに、僕の胸は詰まって何も言えやしない。
 ククールみたいに上手であれば、愛おしい彼女を喜ばせる言葉も浮かんだだろうに、言葉どころか感情を表すことさえ不得手な僕は、感謝の言葉も出なかった。
「ゼシカ」
 ただ、僕は不器用な唇の代わりに、感情の向くままに腕を伸ばしていた。
「ゼシカ」
 何も言えないから、ただ名前を呼んだ。
 抱きしめたいと思ったから、抱きしめていた。
「エイト」
 腕の中に抱き寄せたゼシカの肩は少し緊張していたけど、すぐに解れていくのが理解る。僕の腕に馴染むように収まる小さな肩に、愛おしさが募って腕を強くする。
「ゼシカ」
 二人重なるこの震えが、緊張によるものか、歓喜によるものなのかは分からない。
 僕は自身に疼く感情の正体を突き止める冷静も欠きながら、ただ万華鏡のように変わる彼女の表情が見たくて、彼女が僕の名を呼ぶのが聞きたくて、まるで催促するかのように、唇を、奪った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ねぇゼシカ。
 キスの後はどんな顔を見せてくれる?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【あとがき】 ゼシカは怒っても笑っても泣いても可愛らしいから、
こんな子どうしようって思って書いてみました。  
 
 
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