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我ながら凄い行動に出たものだ 2
「わっ」
目覚めると、隣にクリフトが寝ていた。
(そ、そっか)
と同時に、アリーナはすぐさま「それもそうか」と思うに至る。
もう昔のように冒険はしていないのだし、彼が部屋の外で見張る必要もなければ、襲いくるモンスターも居ない。それに二人は夫婦になったのだから、こうして同じ朝を迎えることに違和感を抱いている方がおかしいのであって。
(慣れるのかな。これが普通になるのかな)
身体の重みをベッドに預けたまま、首だけを持ち上げてクリフトを見る。
(うわぁ……クリフトの、寝顔だ……)
寝乱れた前髪より覗く目蓋はしっとりと閉じられていて、カーテンの隙間より零れる麗かな陽光に睫毛の影を長くしている。差し込む光に肌が輝く様を見て、彼がその眩しさで目覚めるのではないかと、アリーナはそっと手を翳して遮ってやった。
春の陽の暖かさを手の甲に感じながら、改めてクリフトを眺め見る。
(……綺麗)
そろそろ切らねばと言っていた髪は確かに伸びていて、枕に押し付けた藍色の髪がリネンの白に映えている。簡易なシャツを着ただけの姿は、いつも身嗜みを整えている彼を見てきたアリーナにとっては新鮮で、ボタンの隙間より覗く肌に薄く斑点が散っているの見つけると、彼女は思わず頬を染めた。
それは昨日の跡だ。同じものがアリーナの白い肌にも浮き上がっている。
(うわー。なんていうか、)
恥ずかしい。恥ずかしくて、死ぬ。
アリーナが内心悶絶しながら彼の首や鎖骨に散るそれらを指で辿っていると、不意に、クリフトが身じろぎした。
「う……ん、」
次の瞬間、アリーナは寝たふりをしてベッドに沈む。
糸が切れたように首を枕にポスンと落としたので、彼に触れていた手はそのまま首元に置いてきてしまった。しまった、と思えども表情には出さず、アリーナは目蓋を閉じてクリフトの目覚めを感じた。
「――姫様?」
(寝たフリ、寝たフリ)
どこかしら色気のある溜息が吐かれた後で、ゆっくりと呼ばれる。アリーナはクリフトの視線を感じながらも、まだ深い眠りにあるが如く身動ぎしなかった。
いや、それにしても。
咄嗟に瞳を閉じてしまったが、別に起きていても良かった。しかし寝たフリをしてしまったのが最後、今更ケロリと起き上がって「おはよう」とも言えず、ただアリーナは今の彼の言葉に引っかかりを感じながら目を閉じ続けていた。
(……見てる。見られてる)
目蓋ごしに視線を感じる。
シーツの擦れる音がして、アリーナは彼の気配を読み取った。
すると、神経を研ぎ澄ましていた筈の目元が、刹那、暗くなる。これは先ほど自分がクリフトにしたように、彼もまた窓からの日差しを掌で遮っているのだろうと思った。
やることが一緒だ、と笑みを噛み殺した時、そこで持ち前の悪戯心が湧いてくる。
(ワッ! って驚かそうかな。それとも手に噛み付いちゃおうかな)
若しか次に彼が触れた時、腕から掴んでしまおうか。
そうしてアリーナが彼の動きに全神経を注いで身構えていた時、
「おはよう、アリーナ」
クリフトはアリーナの小さな手をそっと取って、
愛おしそうに、慈しむように、口付けた。
「私の奥さん」
アリーナは息が出来なかった。
全思考が今のセリフを反芻して停止していると、クリフトはそのまま彼女の手をそっとシーツの上に置き、ベッドより身を起こして水場の方へと歩いていく。努めて音を立てぬよう、床をしのび足で歩いているのが見ずとも分かった。
しかしアリーナはそれどころではない。
破裂しそうになる胸をギュッと押さえながら、ややもするとベッドの上で暴れだしそうになる心臓を必死に留めている。既に身体は熱くなり、クラクラと眩暈がするほど甘い何かで満たされているのだ。
その間にもクリフトは水道の蛇口より水を流しながら、
「い、言ってしまった……」
と消え入るような声で照れている。
その声すら愛しくて、アリーナは遂にベッドより起き上がっていた。
「……あぁ姫様、おはようございます」
努めて自然に彼に近付いたお陰で、彼もまた自然に迎えてくれる。何事もなかったように。
水道で強かに顔を洗ったのだろう、濡れた前髪を垂らした奥に微笑むクリフトの花顔にアリーナは狂おしそうに笑うと、まだ拭き終わってもいない彼に飛び込んで、その濡れた唇にキスをした。
「おはようっ! 私の旦那様!」
驚いている彼が愛しい。どうしようもなく彼が愛おしい。
「昨日はよく眠れた?」
首を傾げて満面の笑みに問うアリーナに、クリフトは今しがた冷ました顔を再び赤らめて「はい」と答えた。
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【あとがき】 |
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アリーナが寝ている時限定で積極的な神官。
言った自分で恥ずかしがってどうする。
こっちが恥ずかしいわぁっ!@アリーナ
投票してくださった皆様、ありがとうございました☆☆☆
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