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私、ゆんからポッフィー様、またクリアリファンの方々に捧げます。
 
 
 
 
「幼き日の約束」

 
 
 
『…ひっく…えっぐ…。』
幼い少女がしゃがみ込んで泣いている。
『……姫様……。』
『……っく……。』
『…僕が傍にいますから…。』
少年はそう言って少女の隣にしゃがみ込んだ。
 
 
 
 
 
窓から明るい朝日が差し込んでいる。
「もう朝か…。」
青年は呟くと大きく伸びをした。
彼の名はクリフト。
サントハイム国の若き神官である。
彼は消えてしまった国の人々を戻す為に、元凶であるデスピサロを倒す為、仲間達と旅をしているのだ。
クリフトが身仕度を整えているとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「クリフト〜起きてる?」
そう言って少女が部屋の中に入ってきた。
少女の名はアリーナ。
サントハイム国の姫であり、クリフトとは主従関係にある。
だが、クリフトにとって彼女はそれ以上の存在であった。
「おはよう、クリフト。」
太陽のように明るく笑うアリーナ。
それは今まで、どれ程クリフトの心を癒してきたことだろう。
「おはようございます、姫様。」
クリフトも微笑んで挨拶を返した。
……このような感情を持つべきではないことは分かっている。
高貴な身分であるアリーナ姫。
ただの一神官である自分との差は明らかだ。
まして私は、神に仕える身。
神を信じ、神へ清らかな祈りを捧げるのが私の役目。
「もう出発する時間でしょうか?」
クリフトは尋ねた。
「うん。今日はモンバーバラに行くって。」
そう言うとアリーナは少し頬を染め、くるっと背中を向けた。
…気のせいだろうか…?
「そうですか。」
クリフトが頷くとしばし沈黙が流れた。
不意にアリーナが振り返った。
「あ、あのね……。」
彼女は赤くなりながら言った。
「ク、クリフトは……。」
「クリフト!アリーナ!」
アリーナが何かを言いかけた時、彼女の背後に踊り子の服を着た女性が立っていた。
「マ、マーニャさん…。」
「もう行くってよ。」
マーニャはそう言うとさっさと先に行ってしまった。
「…わ、私たちも行きましょ、クリフト。」
慌ててアリーナが言った。
「……ええ。」
クリフトはそう答えるしかなかった。
 
 
 
馬車に乗っていると、いきなりギャーギャーという叫び声が聞こえた。
――魔物だ。
「行くぞ、みんな!」
勇者の一声で彼を含めた4人が戦闘を開始した。
その中にはアリーナの姿もあった。
それを馬車の中から見ていたクリフトはロザリオを握った。
――ああ、神よ。
どうか、アリーナ姫をお守り下さい。
幸い、戦闘は無事に終わり、クリフトはほっと胸を撫で下ろした。
…いつもアリーナ姫が戦闘に参加する時は不安になる。
もちろん姫様はお強いし、またそのお姿はとても勇ましくて素敵なものだけれども。
だけど、それでも姫様の身に何かあったらと考えると心配になる。
……自分がとてももどかしい。
体力も人並みではあるが、それでも姫様の丈夫さには劣るし、力だって…男である自分よりも姫様の方が強い。
どうにか剣は扱えるものの、それでも姫様には到底及ばない。
もし、ライアン殿のように力も強く、頑丈な体をもっていたら、姫様をお守りすることも出来るだろうに。
「クリフト?」
名前を呼ばれてクリフトはハッと顔を上げた。
彼の目の前にはアリーナがいた。
「あのさ…ちょっと転んじゃったから治してくれる?」
彼女の膝には大きな擦り傷が出来ていた。
「はい。…ホイミ!」
クリフトが呪文を唱えると傷はみるみるうちに塞がっていった。
「…ありがとう、クリフト。」
にっこりと笑ってアリーナは言った。
「どういたしまして、姫様。」
クリフトも微笑み返した。
本当の自分の願望を心の奥底に隠して…。
 
 
 
それ以降はあまり魔物は出現せず、また、魔物が出てきてもアリーナは馬車の中で待機していたので、クリフトは安心していた。
夜になると、大きな劇場がある明るい町が見えてきた。
……ここがモンバーバラ。
「うわ〜大きな町!」
アリーナは馬車の中から見渡して叫んだ。
そしてそこからピョンと飛んで地面に下りた。
「クリフト〜!早く来て〜!!」
アリーナに呼ばれ、クリフトは急いで馬車から降りた。
辺りには、酒場や明るく輝くネオンサインがあった。
「すご〜い!面白そう!」
そう言って好奇心の赴くまま走っていくアリーナ。
…この町は歓楽街だ。
もし、姫様の身に何かあったら…。
クリフトは必死でアリーナを追い掛けた。
「ひ、姫様!!」
やっとのことで追い付くと、アリーナは道の真ん中で立っていた。
「ねえ、クリフト!ここ面白そう!入ってみようよ!」
そう言って指したのはピンクのネオンが輝く建物。
それを見たクリフトは目眩がした。
「ちょ、ちょっとクリフト!?」
アリーナの声も届かず、クリフトはその場に倒れてしまった…。
 
 
 
気が付くとクリフトは宿屋のベッドに寝ていた。
『あ…あれ?確か姫様を追い掛けて…。』
何故自分がこのような場所にいるのかを考えて、体を起こすとドアが開いて誰かが入ってきた――アリーナだった。
「クリフト…よかった。気が付いたんだ…。」
いつになくしんみりとした口調だった。
「姫様……。」
クリフトが驚いて口を開けていると、アリーナがベッドの脇に置いてあった椅子に腰掛けた。
「…ごめんね…クリフト疲れてたのに…私が無理に連れ回したから…。」
そう言ってアリーナは俯いた。
「い…いえそんな…。」
クリフトは慌てて弁解しようとしたが、アリーナがそれを止めた。
「……もしクリフトが目覚めなかったらどうしようって思った。」
俯いた顔から、雫がポタッと膝の上に落ちた。
「……ずっと好きだった人がいなくなってしまったらどうしようって思った。」
アリーナのことばにクリフトは耳を疑った。
姫様が……私のことを…?
「…クリフト…10年前のこと覚えてる…?」
アリーナは顔を上げて涙を拭いながら言った。
「……ええ。」
「……今日はちょうどあれから10年たったのよ。」
10年前……私のお母様は病気で亡くなった。
当時の流行病だったと思う。
お葬式では、泣かなかった。
とても、お母様が死んだなんて思えなかったから。
お葬式が終わって、私はいつも遊んでた中庭へ向かった。
ここは、お母様のお気に入りの場所だった。
私がお母様のところに行くと、いつも優しく微笑んでくれた。
ここに行けばお母様はそこにいる。
そう、思いたかった。
でも、そこには誰もいなかった。
いくら呼んでも、叫んでも。
私に優しく微笑んでくれた人は、もういなかった。
そう気付いたら、私の目からは涙が溢れた。
『…っく…お母…様…。』
どうして?どうしていないの?
いつもここにいたじゃない。
私に笑いかけてくれたじゃない……。
そのうちに、立っているのも辛くなって、しゃがんで泣いていた。
「私がずっと泣いてたら…クリフトが来てくれて…。『ずっと傍にいる』って言ってくれて…。すごく嬉しかった。」
「姫様……。」
「……いつもクリフトは私の傷を治してくれるけど、それだけじゃなくて、私のことかばって守ってくれるよね。」
クリフトはアリーナの言葉を聞いて、夢を見ているようだった。
私が…姫を守れている?
「クリフトは…兵士や私とは違う強さをもってる。」
少し俯き加減に、頬を染めてアリーナが言った。
「昔からクリフトのこと好きだったけど、それが恋だってことに気付いたの。」
クリフトは驚きで口が開いたままだった。
そしてその顔は、アリーナに負けず劣らず真っ赤になっていた。
「……クリフトは……私のことどう思ってる?」
再びアリーナは顔を上げ、クリフトを真っすぐに見つめた。
………ああ、神よ。
貴方に仕えながら、恋に落ちてしまう私を、お許し下さい。
クリフトは深く息を吸い込んだ。
「私も…貴方のことを愛しています。」
クリフトがそう言うと、アリーナは目を大きく見開いた。
「ほ、本当に……?」
アリーナが尋ねるとクリフトは頷いた。
「…クリフト…私…。」
強くなりたいと思ったのは貴方を守りたいからよ…。
アリーナは言えなかった残りの言葉をクリフトの唇へと伝えた。
 
 
 
 
 
『…本当に、傍にいてくれる?』
『はい。ずっと…姫様のお傍にいます。」
『ずっと?』
『はい…ずっといます。』
『じゃあ…ありーな、くりふとのこと守る!強くなって、くりふとのこと守る!』
『姫様………。』
『くりふと…大好き。』
 
 
 
 
 
「『愛しています…アリーナ姫。』」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あとがき 短くてすみません。
そして反省点は多いです…(笑)
お楽しみいただけたら幸いですvv
ここまでお読みくださりありがとうございました。
 
 
 
 
 

【 感 謝 】 クリアリ          !!!!!
昔の約束を今でも覚えて守りあってるところがツボです☆
アリーナの方が腕力では(鬼の如く)強いんでしょうけど、
彼女がそういった表面的な強さではなく、
クリフトの精神的な強さに気付いてるのが素敵…(惚)!
 
てか姫様! ピンク街に爆走しちゃダメーっっっ(笑)!
 
素敵な小説のご投稿、ありがとうございました☆
 
 
 
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