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ごほうび
 
 今日のアリーナ様は機嫌が悪い。
 さてどうしたものかと彼女を見やれば、視線を感じた途端にプイと顔を背けられ、クリフトは苦笑する。
……何よ」
「先程の事でしょうか、姫様」
 クリフトは、既にアリーナが不機嫌になった理由の察しがついている。自惚れでなければ、彼女は先刻の出来事に嫉妬しているに違いなかった。
「知らない」
 確かに、花屋の娘と話していたのは自分で、宿屋の窓から「クリフトのばか」と言われるまで足を留めていたのも自分。
 クリフトは困ったような、それでいて嬉しい溜息を一つつくと、背に隠していた手を差し出した。
「これは姫様に、」
 顔を背け、天を向いていた鼻を擽る香りに気付く。横目に視線を落とせば、ピンクやオレンジの華やかな、鮮やかな春の花畑を思わせる花束。
「これは会話のついで? それとも当て付け?」
……意地悪ですね」
 本当は貴女だって理解っている筈。病み上がりのアリーナの部屋に、少しでも春の空気をと花屋へ赴き、花に疎い自分が店の娘に相談していたことを。
「ご機嫌取りなんて、しなくて良いのよ」
 それなのに彼女が“こう”なのは、嫉妬に加えて意固地になっているようで。
 あぁ、そうか。
 きっと貴女は待ってらっしゃるのだ。
「貴女に似合う花が多すぎて迷っていましたら、店員さんが手伝ってくれましたよ。お陰で色合いや花言葉も合わせた素晴らしい花束になりました」
……
「これは、一日おとなしくお休みになっていた貴女へのご褒美です」
 言わなくとも伝わる真実ではなく、私の口から直に出る証明を。
「よく頑張りましたね。顔色もとても良くなりましたし、明日は外に出られるでしょう」
 にこやかな笑みで柔らかく話すクリフトの声に振り向き、自然とアリーナは花束を受け取っていた。
 顔を埋めてその芳しい香りを匂うと、アリーナの不機嫌は次第に収束していく。
……ありがと」
「どういたしまして」
 にっこりと二人が微笑みあう。アリーナは彼の穏やかな微笑を見て、気付いたように花束の一輪を抜いて彼の前に差し出した。
「じゃあ、はい。クリフトも」
 それは花束の中でも一番大きい花弁をした桃色のバラ。
「これは?」
「貴方だって一日中私の看病で大変だったでしょ? クリフトにもご褒美あげないとね」
 その笑顔は、窓より差し込む陽光がなくとも十分に美しい。感情に素直なアリーナが微笑むときは、それが本当に彼女の心より湧き出でるものであると知っている彼には、些か眩しすぎるほど。
……ありがとうございます」
 クリフトはそう言って、アリーナを己の胸にかき抱いた。
「え、えっ……
 胸の中で戸惑うアリーナをゆったりと見つめて、クリフトは視線を泳がせている彼女の細い顎に手を添える。
「ちょ、クリフト」
 とても心配していたのに、漸くベッドより起きられて見せた表情は可愛らしいヤキモチ顔。どうしたものかと困惑していれば、再び私を惑わせる労いの言葉を仰せらる。
 無垢な天使か狡猾な小悪魔か。いつだって貴女は私の心を繋いで放さない。
 それでも私に「ご褒美」をくださると仰るならば。
「では、その悪戯な唇から」
 
 弱々しい躊躇いの声を塞ぐように、クリフトの唇がしっとりと落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【あとがき】 いつになく「攻クリフト」ですみません。
この後は氷結させますんで。許してください(笑)。  
 
 
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