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君にオヤスミ
「おやすみ」
君にそう言うのが辛くて仕方なかった。
「…おやすみなさい」
今日も。やっぱり。
君が悲しい顔をするから。
僕が夜の挨拶をする時は、君と暫しの別れをする時。浮かない顔の君を部屋の前まで送り届けると、扉の前で君と向き合った僕はいつも胸が締められる。
「…夜なんて来なければいいのに」
ドアノブにかかる君の手が躊躇している。つま先は部屋の方向を差しているけど、首は僕を向いたまま。先ほどまで綻んでいた佳顔は此処に来るまでに次第に消えうせ、今は寂しさいっぱいに眉を顰めている。俯き加減に「まだ眠くないわ」と訴える瞳が切なく、そして可愛らしい。
「明日も会えるよ」
宥めるように言ってるけど、勿論僕だって寂しい。
こうして君を送った後、独り冷たいベッドに身を横たえる時の寒さといったら。つい先程まで間近にあった君の優しい温もりを反芻して眠る侘しさといったら。
「…」
「…」
そうして僕も寂しい表情を見せたら、ミーティアの手が胸元の服をキュッと握ってきた。
「…」
君の言いたい事は理解る。でも、僕は君の傍では眠れない。
「…ダメだよ」
僕だって君を胸に抱いて眠れたらどんなに幸せだろうと思うけど、そうしたら僕は翌朝に打ち首になるだろうし、君だって周りの侍女達に色々と言われるだろう。ただでさえ僕達は幼馴染みという以上に仲が良いと変な目で見られているのだから。サザンビーク王家との結婚式、君と一緒に逃げてからは余計にそう思われている。
大体は間違ってはいないけど、僕と君はまだ皆が思うような関係じゃない。
「また明日、迎えに来るから」
「…」
そうじゃなくて、と君は頬を膨らませる。
子どものように聞き分けのない君も堪らなく愛おしい。
「ミーティア」
「…」
あぁ、そんな顔しないで。
僕の弱い意思は今にでも消えうせて、君を掻き抱いて閉じ込めたくなる。
「お願い。もうちょっと我慢して」
「…」
あともう少しだから。
「明後日。明後日まで待って」
「…明後日?」
君は覚えているかな。
明後日は君と僕が初めて出会った日。僕が恋に落ちた最初の日なんだよ。
明後日、僕は君に結婚を申し込む。
「…どうして?」
そんな僕の心を知らない君は、子供の頃から変わらない上目に好奇心を乗せて聞いてくる。
「…まだ秘密」
「もう」
ごめん。まだ言えない。
君の為に錬金している指輪がまだなんだ。
でも。
「その日の夜には、君に言う「オヤスミ」が変わっていると思うよ」
「?」
暫しの別れを寂しがるものでなく、共に暮らす喜びとしてのオヤスミを。
「だから、それまで」
「エイト…?」
不思議そうに見つめる君は、明日はどんな表情を見せてくれるのだろう。そして明後日は。
そう思って僕は胸元の白い手を取って、唇を落とした。
「オヤスミ」
君にオヤスミ。
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【あとがき】 |
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プロポーズの決意をするキッカケは人によって違うと思いますが、
日常でふと感じる小さな幸せを一緒に感じたいなーという
優しい気持ちがそうさせてくれるのではないかと思います。
ここ最近、主姫の更新がなくってイライラしてる冒険者さまに。
ありがとうございましたっ!!!
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