遂に最後のダンジョンです。
ここは「暁!氷結クリフト」、もうアウシュビッツです。
なにをどうしてもアレなソレしか居ませんので、
普通の神官が好きな方は、マトモな人生を歩んで下さい。
暁!氷結クリフト
第1弾 「氷結、再臨」
勇者ソロは不治の病に倒れたという青年を助けるべく、ソレッタの南に位置する氷の洞窟へ行って、万能薬・パデキアの種を取ってきました。
「あら、いい男」
どんな病に倒れたというのか、壮麗な佳顔を真っ青にさせて寝込む青年は、マーニャの言うとおり美形です。
ソロはもぎたての苦い薬を煎じると、彼の細い首を持ち上げて、その咽喉に薬を注いでやりました。
「……っはぁ! ここは!?」
「クリフト!」
長い睫毛がパッチリと開くと、それを見たアリーナ姫は満面に笑顔を浮かべて彼の名前を呼びました。
「良かった! クリフト!」
「姫様?」
アリーナ姫がちょっと泣きそうな表情なのは、彼女もまた一生懸命に彼の復活の為に尽力したからで、彼女の側に居た魔法使いのブライは、クリフトが倒れてから何があったのかを本人に説明してやりました。
「そ、そうでしたか……」
「でも良かったよう。もう目覚めないんじゃないかって心配したんだよ」
目尻に溜まる涙を指で拭いながら、アリーナ姫は安心したように言います。
それもその筈、これまで彼女は夜な夜な彼のベッド脇で病が治るようお祈りをしていたのです。大切な仲間であるクリフトの復活に心から安堵している姿は微笑ましく、ソロ達もにっこりとその様子を眺めていました。
「立てる? クリフト」
「えぇ、勿論です! 勃ち上がってまいりました!」
ベッド横から身体を気遣うようにのぞきこんだアリーナ姫に、クリフトはガバッと襲い掛かります。
「クリフト!?」
「この通り ピ ン ピ ン して、いやもう ビ ン ビ ン です!」
「きゃー!」
「お寂しい思いをさせてしまった分、張り切って――!」(ハァハァ)
「そのまま眠っておけェェッッッ! 永遠にィィィィ!!!」
「貴様が病んでいるのは性根の方じゃ、このクソッタレめが!」
氷の魔法使いがそうしてアリーナ姫を引き剥がした後は、復活早々におイタをかました神官が、再び氷塊となってベッドに沈んでいきます。
「…………」
なんだかとんでもない一行を助けたのではないかと、勇者ソロは陰でゴクリと生唾を飲み込んだのでした。
哀れ、氷結クリフト。
封印を解いてしまったようです。
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