14階まで来ました。
続・氷結クリフト
その壱拾四 「合コンの定番」
「ヒマねー」
今日の天気は大嵐。
一行は町の宿でひがな一日退屈と戦っているらしく、アリーナ姫もロビーの窓から見える雨粒をぼんやりと見ながら呟きました。
「それではゲームをいたしましょう」
「クリフト」
そんなアリーナ姫を見かねてか、クリフトはいそいそと走り寄って彼女の隣に腰掛けると、手に持ったクジを差し出して言いました。
「なに、これ?」
「王様ゲームという遊びです」
古くは人と竜が会話すら出来たという時代に生まれ、王侯貴族の間で一大ブームを巻き起こした由緒正しき遊戯のひとつで云々、クリフトはもっともらしく説明すると(大嘘)、掌に隠したクジをアリーナ姫に引いて貰います。
「1番って書いてあるわ」
「私のクジには王様と書いてありますっ!」
ちなみにクジは2本しかありません。
「このゲームは、王様になった者が番号を引いた者に何でも命令出来るのです!」
「え、そうなの」
「はいっ! では私、僭越ながら王様にならせて頂きますっ!」(ハァハァ)
あんまりよく理解っていないアリーナ姫は、クリフトが何をするのか様子を窺っているのですが、それもクリフト・アイ(腐ってる)には命令を催促する艶かしい視線に感じられ。
「あぁっ、姫様! そんな悩ましい瞳で見られては!」
クリフトは王様のクジを握り締めながら、頬に手を当ててもじもじと身悶えます。
「あぁ! そんな姫様にそんなこと! ああぁ!」
妄想逞しくさせたクリフトは、暫し唖然とするアリーナ姫の前で独りあやしいイメージを膨らませると、ようやく一息吐いて意を決めました。
「で、ではっ! 1番は王様に熱烈キッス――」
「こんのクソガキャー! 目を離せば直ぐ淫罪をはたらきおって!!」
「嵐を鎮める生贄にしてくれるわ!」
外の大嵐よりも冷たく凍えるブリザードが吹き荒れた後は、王様のクジを握ったままの神官が鼻血を噴き出しながら氷となっているのを、暇を持て余したメンバー達が侮蔑と憐れみの眼で見つめます。
「あぁ、またクリフト凍ったの」
「うん」
すれ違いに氷柱(しに)を眺めては呟く仲間に、アリーナ姫は生返事をしながら、再び窓の外を眺めるのでした。
哀れ、氷結クリフト。
皆慣れてきた。
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