人であることが嫌になる。
魁!氷結クリフト
第15幕 「輪廻転生」
エンドールの闘技場では、まだリック王子とモニカ姫の結婚式が行われています。
朝から晩まで熱烈キッスを見せ付ける光景は誰もが見飽きたと思われるところ、世界中の観光客が日替わり参観を行うということですから、双方とも飽きていないらしく。
「聞けばお二人は、敵国同士の叶わぬ恋であった時に、生まれ変わったら王族という身分の縛りのない男女として結ばれようと誓い合ったとか」
入場口で配られていた『リック&モニカ、愛の奇跡』というパンフレットを手に取ったクリフトは、溜息をついて闘技場の中央を眺めます。
「あぁ。私は次に生まれ変わる時は王子さまになりたい……」
「クリフト?」
なにやらブツブツと呟いているようで、アリーナ姫の声も聞こえないようです。
「いや寧ろ 今 す ぐ に で も 王子さまになりたい! そうすれば、」
甘い口付けを何度も交し合う二人を見つめていたクリフトはカッと瞳を見開くと、苛烈悲壮な面持ちでアリーナ姫に向き直りました。
「そうすれば、
「私もあのように姫様と舌を絡めあった濃厚キッスが堂々と出来るのに!」
「し、舌……えっ?」
「朝晩を問わず公衆の面前で姫様を、私のものだと言わんばかりにハァハァ!」
「ク、クリフト」(鼻血が)
またもや妄想に耽っているらしく、彼は人目に晒された闘技場の真ん中でアリーナ姫と行為に勤しむという、イケナイ想像を逞しくしています。
「ただ、今はっ!!」(くわっ!)
「な、なに?」
「今は秘密の恋ゆえ、人知れず激しく燃える愛を誓い合いとうございます!」
「クリフト」
だめだ……こいつ早くどうにかしないと……
「愛の誓いは、言葉と身体でッ!!!」
リック王子とモニカ姫に触発されたクリフトが、鼻息荒くアリーナ姫の両手を握り締めたその時、
「生まれ変わりなど必要ない! 死んで生きて返るな、このドグサレめが!」
「姫様の結婚式はあのような淫らなものにはしますまい」
そう言って老魔導師がアリーナ姫を連れ帰った後には、エンドール第二の名物となる巨大氷柱が立てられたということです。
哀れ、氷結クリフト。
PS版でクリフトが生まれ変わりの話をしますが、
「しに」という状態、棺桶から復活するDQ世界では
死は永遠の眠りであって輪廻転生の理念はなさそう。
でも彼が「生まれ変わり」という言葉を知っていたなら、
それはそれで色んな妄想が出来て楽しいかもしれません。
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