タイトル通りにウザい神官。
暁!氷結クリフト
第3弾 「パデキアの洞窟」
「さ、寒い……」
パデキアの洞窟は、ソレッタ国でパデキアが栽培されるようになってからは冷凍保管庫として使われるようになっていました。一行は新薬の保存の為に再びこの洞窟へと入ったのですが、内部は相変わらず一面の氷で、足元は滑るわ落とし穴は多いわ、もう最低な所です。
「あぁ! 私の為に姫様はこのようなお寒い中で旅をなされて!」
仲間達が身を縮めながら歩くなか、ひとりクリフトは身体をウネウネとさせながら興奮していました。
「凍えながらも私を心配して秘薬をお探しになり!」
洞窟内で声を響かせながら、クリフトはなお続けます。
「悴むお手を擦りつつ、私を思って冒険を!」
「ちょ、クリフトうるさい」
アリーナ姫は寒さで赤くなった指先を擦りながら言いました。
「嗚呼、姫様! 寒かったでしょう! お寂しかったことでしょう!」
「ク、クリフト」
「さぁっ! 今はこの私でお温まりください!」
彼女の白い息を見たクリフトは、厚手のコートどころか旅の服まで脱ぎ捨て、裸で彼女に迫ります。
「クリフト!? 服着て! 寒いよ!」
目も当てられません。
アリーナ姫はまるで変質者のような神官を、手で覆いながら言いました。
「肌と肌で触れ合えば、寒さもしのげるというものです!」
「その前に死ぬよ!」
「ちょ、ちょっと 運 動 なんかもしたりしてハァハァ!」
「貴様ァ、喋らせておけば戯言をほざきよりおって!! 天誅!!」
「こいつもここにブッ込んでおきましょう」
「死体遺棄?」
天然の冷蔵庫にクリフト(しに)を封印した一行は、そのまま旅が終わっても、洞窟には行かなかったということです。
哀れ、氷結クリフト。
まさに彼の為の洞窟。
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